【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第3章 笑わないマスターがちょっとだけ笑う話
「お、出来たの?」
「もしかしてスコーンかい?」
「紅茶はあるのか?」
「どうぞお構いなく。しかしスコーンにクロテッドクリームは逆らいがたい魅力がありますな」
「ぼくのぶんは、ありますか?」
「エカチェリーナ、お茶にジャムを入れても?」
「すいーつは貴重ですから是非いただきたいのですが」
「俺の席はどこだ?」
「すいーつと茶が出るのか?」
「ハーハッハッ、この私の顔を拝みながら茶会ができるという栄誉を与えてやろう!」
「陛下……あの…………何でもないです。うるさいなぁ」
「陛下とお茶会!」
「陛下、ブランデーを入れても良いでしょ?ちょっとだけ」
「茶会か?懐かしい。茶菓子はあるのか?」
「大御所様、さあこちらへ」
「あらあら~、お茶会?綺麗なドレスじゃないけど大丈夫かしら」
あっという間に調理室は貴銃士で満たされた。
シャスポーとタバティエールが茶器を用意してカールとレオポルトがウキウキと気に入りの茶碗を棚から出す。
エカチェリーナが薬罐を火にかけ、アレクサンドルは冷蔵庫から好きなジャムを取り出す。エセンやアリパシャが我が物顔で乗り込んできてマフムトなんかもう勝手に座っている。
ナポレオンは高笑いをしているし、その隣でラップが苦笑い。ニコラとノエルは棚から出してきたナポレオンブランデーを抱えてニコニコしていた。
イエヤスが静々とヒデタダに導かれて上座につこうとしてナポレオンと鉢合わせ何やらもめる。
そんな雑音を全く意に介さずフルサトが入ってきた。
もう席は足りないし勝手にみんな椅子を運んでくるし……。