【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第3章 笑わないマスターがちょっとだけ笑う話
「貴様ら昼間から何をしている!」
ジャムはタバティエールに監修してもらい上手く出来た。裏ごしして煮沸した瓶に詰めただ今粗熱をとっている、――と怒鳴られ振り向く。
ベスくんだ。
彼の登場にタバティエールはくっとグラスを空けて流しに置いて走り出て行く。
「いやちょっと、」
「ちょっと?」
テーブルの上のワインの瓶に流しのグラスと目をやりベスくん。
「何やら甘い匂いがするが……?」
「クロテッドクリーム」
タバティエールと飲みながらカクテル用のシェイカーに入れて振ったそれを指さすとベスくんはパァと目を輝かせる。
「と、いう事は?」
……?
「イングリッシュスコーンとジャムはどうした?」
まだだよ?
「はぁ?クロデットクリームに見ればジャムがあってスコーンと紅茶がないなんてなっちゃいない!」
熱弁するベスくんの声が酔い出した頭に痛い。
耳に指を入れると引っこ抜かれ手に何か乗せられる。
小麦粉?
「さあ作るぞ!」
ぐっとシャツを腕まくりするベスくん。
確かに誰かにスコーンの作り方を聞こうと思ったケド今すぐに?!
「今すぐだ。さぁ、前掛けをしろロッタ」
「ロッタ言うな!」
炊事当番用のエプロンを渡されかける。
可愛くもカッコ良くもないシンプルなそれは俺には似合わない気がするけど文句を挟む隙はない。
ベスくんが粉やら計りやらを引っ張り出すのを見ながらため息をつく。