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【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.

第3章 笑わないマスターがちょっとだけ笑う話


そして次の休みの日。
早生の木苺を朝詰みに行き、キッチンへ。
洗った木苺、と合わせた砂糖。鍋。
ホントは苺が良かったけどなかったんだよ!
砂糖と合わせた木苺を鍋にかけ火をつける。
これはどれ位煮たら良いんだろ?
取り敢えずとろ火で様子を見る。
「お、ロッタちゃん何してるの?」
鍋を睨みつけていた俺の肩口からタバティエールが顔を出した。
「ロッタ言うな。ジャム、作ってるんだけど」
言えば『ふーん』と答えて彼は胸ポケットから煙草を出しジャムの火で先端を焼き急いで口に咥える。乾いた草が燃える苦味を感じる匂いに顔をしかめた。
「タバティさんは今日は休みじゃないよね?」
彼は笑いながら棚から何やら出してドリップしている。
「喉が渇いたからちょいとコーヒーでも飲みに来たのさ」
マグに注いだコーヒーを傾けタバティエール。
「それはそうとシャルル、君はジャムを手作りしてまで食べたかったのか?」
「いや、マスターにあげるんだ」
ふるふる蕩け出す木苺を木ベラで混ぜながら俺。
「焦げないようにな。後煮詰まってきたらレモン汁を入れる」
「レモン汁?」
しまった用意してない。
俺の顔色を読んだのかタバティエールは棚から瓶に入った粉末を出してくる。
「クエン酸粉末だ。ちょっとずつ加えてとろみ付に使いな」
タバティエール、モンアンジェ!
「天使(アンジェ)なんてよせやい!焦げそうなら風味付け程度にこれ入れな」
更に真っ赤(ルージュ セリーズ)なワインまでくれる。
ルジェワインか。飲みたい……。
「……」「……」
俺達は無言で冷蔵庫に入れてある脚長のフルートグラスを出し互いに注ぎ合った。
サンテ!(乾杯)
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