【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第2章 罪と罰の澱の中で
「頭が痛い……」
相も変わらずベスくんにギリギリと締め落とされながら俺。
酸素が遮断され頭がぐわんぐわん痛い。
口径が大きい筋肉ダルマのベスくんと違って、俺はマイナーチェンジされつつもロングバレルの細身がウリだ。
最近やっとこの細い体に慣れてきた。
色んな場所から出る色んな名称の液体にも。
血は痛いから出したくないし、汗は優雅じゃない。
でも……俺より細い体を屈指して自分より大きい男性を相手にするマスターの額や腕から散る汗は綺麗だ。
土のついた手で額を拭いべたべた茶色に伸びる汗はドロドロで汚い筈なのに……。
すごく、……マスターは綺麗だ。
いつもマスターはそうやって顔が汚れるとスキットルを出して水をかけて猫みたいにプルプル頭を振る。
は毎日綺麗に洗われたハンカチを持っていて泥を拭くと又すぐ訓練に戻って行く。
「マスター!」
今日もベスくんに投げられたので足を掴んで引き倒し寝技を掛け合っていた俺達の側をマスターが通る。
「チャオチャオ」
襟を掴んで力任せに締めてこようとするベスくんに足を絡めて引き剥がし逆に首を抱えて締めながら手を振った。
「サリュ」
こっちを見すらせず手をヒラヒラ振って行こうとするマスター。