【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第2章 罪と罰の澱の中で
「ごめんなさい」
三日の営倉行きを終えた俺を待っていたのは――案外にも――マスターの侮蔑の視線ではなく謝罪だった。
「え?」
「え?」
「いや……こちらこそ。ごめんなさい、マスター」
『お嬢さんなんて……』と言えばマスターの視線が険しくなる。
が――すぐその視線は彷徨う。
「ごめんなさい……私は、チビの……お嬢さんです……」
くるりと踵を返すマスター。
又、マスターが逃げてしまう。
やっと仲良くなったのに――。
「マ ベル……」
手を掴みながら言えば、アッと思う。
又彼女を女扱いしてしまった。
「え?」
手を引かれ振り向きながらマスター。
「美しい人?」
聞き返してくる彼女に頷く。
「美しい人」
思わず頷き返す。
「マスターは美しいよ。俺の美しい人(マ ベル)」
手を優しく握り直しウィンクを投げる。
「ありがとうございます」
俺の手の中から自分の手を引き抜きながらマスター。
んん?これは外したの?当たったの?
マスターはばっと俺から逃げ出した。
ほら――貴女はすぐそうやって俺を遠ざける。