【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第2章 罪と罰の澱の中で
「服を脱げ」
云うベスくんに血の気が引く。
「え?」
聞き返す俺にチッと舌打ちしてベスくんがスカーフを引く。
「営倉ではあらぬ気を起こさない様、着替える決まりだ」
ベスくんの差し出す服を受け取り彼の手を払い自分でスカーフを解く。
一瞬彼に――なんて思った自分を呪いたい。
シャレにならない。
「着替えるんだから後ろ向いてくれない?」
云えばベスくんはハァ?と声を上げる。
「だめだ。お前、営倉の意味を分かってるのか?」
懲罰房。
「そうだ。懲罰を受ける人間に人権はない」
キッパリ云い切るベスくん。
「俺達、貴銃士だし」
「銃権はない」
云い直すベスくんに腹の虫が収まらない。
こういう生真面目なとこが嫌いなんだ。
渋々彼の見ている前でシャツを開けていく。
何ら外連無く見ているベスくんに腹が立つ。
「……」
不意にベスくんがスルリと俺の腹を撫でる。
「ひゃっ!」
悲鳴を上げてシャツを掻き合せるながら一歩後退した。
「何だ?」
平然とした顔の彼にイライラする。
「何で触るの?」
「いや、お前も中々ちゃんとした体に育ってきたな、と」
何故か満足気な顔をするベスくんにため息が出る。
シャツを脱ぎ渡された服を広げる。
うわぁ、優雅さの欠片も無い服だ。
ここに来る人間全員に対応した白いネグリジェみたいなワンピース。