第5章 直々特訓。
「どんな特訓をしていらっしゃるのですか。」
目を輝かせては、百さんが私の方を見る。オールマイトとの特訓が終わった瞬間、最初に轟さんが教室に入ってきて秘密ではなくなってしまった。しかも、オールマイトは何か用事があったらしく素早く教室から出て行った。
その後からちょこちょこと教室に戻ってくる皆さん。
自分の席に座っていた所、前の席の百さんが私の方を振り返ってそう聞かれた。
「"笑顔"の特訓をしていました。」
「まぁ、本当ですか!?成果はいかがなものでしたか?」
「全然、駄目でした。教えてくれた方には申し訳ないです。」
「なんか、申し訳ないですわ。……教えてくださった方は一体……。」と聞かれた瞬間、百さんの隣の席である轟さんが「オ」と声を出したので反射的にその口を手で塞いだ。
「すみません、相手にも秘密だと言われていて。」
子犬が餌を貰えないかのように悲しい表情をした百さん。何だか、さっきと同じような悪いことをしたな。という気持ちになった。百さんにだったら言っても良いかな。と気の緩んだ思考が出てきたが秘密は秘密だ。
「明日教えますね。」
「ほ、本当ですの!?しかし、そんなお気に召さないでください!」
「別に、秘密にしていなくて良いことだとも思っていますし。一応は今日までは言いません。」
「すみれさん……。」と何故かキラキラした目で見られた瞬間、手を掴まれて元ある位置から離された。
忘れていていた事に気付き、横を見るとあまり良い表情をしてない轟さん。
「いつまでしているんだ。」
「あ、申し訳ないです。」
手を離されるとそのまま、私は乗り出していた机から体を離し、ちゃんとイスに座りこんだ。
いい感じに相澤先生が来たので、百さんは黒板の方を見た。さっきまで轟さんの口を塞いでいた手を見る。
何も考えてなかった。何も考えてなく、口を塞いでしまった。この頃、自分のそんな行動が分からなくなってくる。
出久の時もそうだ、飛び出していこうとして止められてしまった。
そんな不思議な気持ちに追いついてない自分がいた。
「植村、おめでとう。体育祭出れるぞ。」
その後、相澤先生に呼ばれるまでじっと何も考えられずに、黒板を見ていた。