第5章 直々特訓。
「植村少女、元気にしていたかい?今日は、私と一緒に特訓をしよう!」
体育祭まで残り約2週間、皆は体育祭へ向けて特訓をしているのに私だけは"表情の勉強"らしい。
誰もいない教室で尾白さんの席を借りて、ぽつんと1人で座っている。何だろうか、違和感しかない。あと、あまり良い気分はしなくて皆さんが居てくれたほうが良い。
「オールマイトが直々にですか……?」
「あぁ、そうだ!そのことは秘密な。」
机には、ノートと筆記用具。そして、"感情や心の知り方〜他人を傷つけないように人の心をしよう。〜"と書かれた本。……これが本当に私が表情を豊かに出来るのかは、不明だがあまり期待してない。
「覚えていれば良い、植村少女は最後に笑ったのはいつだい?」
「笑うとは一体なんでしょうか。私にはその"笑う"という具体的な意味が分かりません。」
「ムムム」と唸り、取り出したのはオールマイトの手よりも小さめな国語辞典。それを大きな手で頑張って捲っている。
終わったと思えば、いつもの笑みで私を見る。
「凄く簡単に言うと、主に楽しいとか面白いなどと思ったときに表情がほころぶ事が笑みだ!!」
「……じゃあ、オールマイトは私といて楽しいですか?」
「勿論だ!私も先生ぽいことをしているからな!」
楽しいとか面白いとか思ったとき……。そんな感情はよく分からない。
言われたことをノートに書いていく。そして、ペンを置きオールマイトを見た。
「私は、"楽しい"など"面白い"など思った事がありません。だから、オールマイトみたいに笑えません。」
「うむむ……じゃあ、今から私みたいに口元を上げてみてくれる。」
「こう。」と口の端に指をやり、上げてお手本を見せてくれた。ので、私も真似して口元を上げるがうまくいかない。
何だか重りのようにほんの少ししか上がらず、できたと思えば下がっていく。