第4章 ヒーローの世界。
それは一瞬だった。飯田さんの前には、黒い霧が立ち防いでいた。しかし、障子さんがそれを抱きかえるように止めた。
そして、飯田さんは走るが障子さんからスルリと抜けてまた追いかけられる。
「理屈は知らへんけどこんなん着とるなら……。
実体あるってことじゃないかな!行け、飯田君!」
お茶子さんが黒い霧の首元を触り、浮かせる。
それを瀬呂さんの個性で、捕まえて砂糖さんがその切れ端を持ち吹き飛ばした。
飯田さんは無事に出口の扉を開けて、外へと出ていった。
これこそ、連携プレイというものなのか。
初めて見たかもしれない。まだ、ヒーローは来てないけれどピンチを乗り越えた。
「13号さん……。」
うつ伏せになって倒れている13号さんを見て、心臓が痛くなる。何か治せないのか。
しゃがみ込み、手袋を外して個性を使ってみたが何も治らない。活性化、なんでこんな時に使えないのだろう。
「し、心配しないでぐた、さい……植村さん。」
「心配……?」
13号さんから言われた"心配"という言葉。あぁ、そうなのか、この感情が"心配をしている"こと。
見ていてどうにかしたい。気がかりになっていたのは、心配なのか。
じゃあ、前の訓練の時にお茶子さんに「大丈夫?」と言った時も私は心配という気持ちを持っていたんだ。
「飯田、さんが行ってくれたので、きっと、彼だったら、してくれます。」
「……はい、そうですね。」
苦しそうに声を出している13号さんに周りにいた皆が近づいていく。活性化が使えない今、私は使えない物だ。
それでも、手をまた13号さんにかざす。
「今、抱いている……これが"心配"っていう気持ちなんですね。今、凄く13号さんを活性化、傷を治したいです。でも、使い物にならない私はどうする事も出来なくて……。」
「すみ……。」
三奈さんの心配そうな声が聞こえる。それでもやり続けるが治る気配がなし。前は、治せたのに今は何故、治せないのか分からない。あぁ、本当に使い物にならない。
「もう、良いですよ。」
13号さんの声が聞こえて、手を13号さんから離した。