第3章 可哀想な瞳。
「超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。
しかし一歩間違えば容易に人を殺せる行き過ぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。」
13号さんの話を聞き、きゅっと胸が締まり凄く痛くなった。そうして浮かび上がってくるのは、お母さんやお父さん。お母さんに至っては、"個性"を甘く見過ぎたせいで己の心を蝕んでしまった。前にオールマイトが言っていた"心を蝕んむ。"という事はあっているようだ。
どうしようない違和感につい、胸の方向へポンチョを掴んだ。
なんだろう、この気持ちは。何故痛くなったのだろう。
凄く体が重くなった。
「すみれちゃん、どうしたの……?」
「……何でも、ありませんよ。ただ急に心臓が痛くなっただけです。」
近くにいたお茶子さん小声で言われた。心配をさせてしまったようだ。しかし、さっきとは嘘のように落ち着いたので手を離す。
何だったんだろうか、一体。不明である。お話をしている13号さんの方をまた、見た。
「この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう。」
人命のために……。
完全に落ち着き始めた、体がその言葉に……まるで解されたように開放された気がした。
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。」
ヒーローとは危険が隣り合わせである。ということを教えてくれた凄く良い講習だった。「ぶらぼー」と言う声で拍手が鳴りあまる中、少しの違和感を覚えて13号さんをじっと見つめた。
あれ……?黒い霧なんてさっきまであったけ?
奥には、渦巻きみたいな黒い霧のような物があった。
「何、あれは。」
無意識に出た私の声が響いたと共に、相澤先生はその黒い霧の方を勢い力振り返り見た。そして、片手をバッと私達生徒の方へ出す。
「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」
空気が一気に変わり、相澤先生はゴーグルをかけた。
急にレスキュー訓練が始まると思っている人もいる。正直に言って私も思いたい。しかし、現実は相澤先生を見ると甘くはない。
「あれは、ヴィランだ。」
相澤先生の声は生徒中に響き渡る。妙な胸さわぎがまた起きた。何故、ヴィランがここに?