第3章 可哀想な瞳。
「家がここの近くなんです。あ、そこです。」
自分の家である、マンションが見えたので指を指すと「はぁ!?」と驚いたような声がした。
何がそんなに驚くのだろうか?悪いことはしてない。なんというか、驚かれることが多い。
「デクと同じマンションかよ!チッ!!」
大きな舌打ちをうち、そのまま私達から通り過ぎた。……"デク"?横を見ると気まずそうに目線を外している出久さん。
もしかして、出久さんのこと?まぁ、漢字の読み方は"でく"だけれども。
「……僕とかっちゃんは幼馴染みなんだ。」
「幼馴染みなんですね。性格真逆です。」
「そうなんだ、それでも幼馴染みでこうやって植村さんに気にかけているのを見るのは初めてで。」
幼馴染みなんですね。だから、あんなに驚いていたんだ。納得しているとあまり良い表情をしていない出久さん。……あまり関係はよろしくない?
「"デク"ってあだ名ですか?私もそのように呼んだほうが良いですか?」
「どっちでも良いよ、呼んでいる人もいるし!」
「やっぱり、いつも通りに"出久さん"って呼ばせてもらいます。」
「へ…?」と鳩が豆鉄砲を食らった顔をしている。何か悪いことを言っただろうか?デクよりも出久さんの方が呼びやすいからそうしたけれど……。あと、引子さんともほんの少しだけれど話しているから。
「やっぱり、引子さんに"デクさん"が〜て言ったら、デクって誰だ?て思ってしまうので。」
「あ、あぁ。植村さんってお母さんと仲良いからね。」
「仲良くしていただいています。また、あだ名は呼ぶ機会があれば呼ばせてもらいますね。」
歩いているともうマンションに着いてしまった。あ、そうだ。出久さんの鞄を掴み、歩いているところを止めた。
「セキュリティー3が突破されたこと、私のお婆ちゃんにはあまり言わないでください。心配されちゃいますので。」
「うん?分かった、お婆さんには秘密にしておくよ。」
心配させちゃってまたびっくり腰になられても困りますからね。なんてお婆ちゃんのために言わないことにしておいた。まぁ、出久さんは言うことはまずないと思いますけれど。
鞄から手を離し、一緒にエレベーターに乗った。