第1章 雄英高校
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「いずくさん、初めまして。」
「え、あ、えぇ!?どど、どうしたのですか!?」
入学式ふっ飛ばしての体力テストが終わった。早帰りなので、1人でゆっくりと帰っていると電車でいずくを見た。降りる場所も同じなので、帰り道も必然的に同じになる。
お婆ちゃんが言っていた"まずは最初に挨拶"をしなければならないと聞いた。だから、前を歩いていた出久さんの鞄を軽く引っ張るとバッと振り返られた。
そして、挨拶をすると驚かれて何故か顔が真っ赤だ。もしかして、間違えた?
「もしかして、緑谷出久さんじゃないのですか?」
「いいえ、緑谷出久です!!……えっと植村さんだよね……?」
「植村すみれともうします。いずくさんの事は、引子さんから聞いてます。」
「あ、あぁ!お隣の植村さんか……!お母さんから聞いているよ。」
と妙に納得している出久さん。引子さんから聞いていたのか。隣に移動すると「それでどうしたの?」なんて不安そうな声を上げる出久さん。
何故そんなに不安そうなのかは分からない。
「……隣ですし、クラスも一緒でしたので挨拶をしました。まぁ、もしも出久さんとクラスが違くても挨拶はしていたのですけれどね。」
「そういう事か……びっくりしちゃったよ。」
あと、"お友達"という関係になれるかもしれない。というほんの少しの好奇心。
えへへ、と情けなく笑う出久さんを見る。やはり、引子さんと似ている。雰囲気もそうやって笑うところも。
お婆ちゃんと仲良くなる人だから、覚えておこう。ていう考えがあってよかった。
「除籍処分にならなくて良かったですね。」
「本当にあれは肝が冷えたよ……。」
あのどんでん返しは想定外だった。もし、私が最下位になっていたらどうなっていたんだろうか?……全然想像は出来ないけれど。そう話している内にマンションに着いてしまった。
一緒にエレベーターに乗り、階に降りて部屋まで一緒に行く。
「じゃあ、また明日ね。」
「はい。また明日。」
……友達になれたのだろうか?分からない。出久さんが扉を開けて入って行くのを見て自分の部屋の玄関を開けるとそこにはお婆ちゃんがいた。
「すみれちゃん、おかえり。」
「ただいま、お婆ちゃん。」
聞いてみよう。お婆ちゃんに。