第12章 S&N 2
カメラの前では普段通りを装って笑ったりツッコんだりしているけど
機械的にしているだけで人間味が感じられない
カメラが回らないところでは感情を閉ざしたかのように「無」で
ゲームもやらずひたすらメールをやりとりしていて、誰かから頻繁に電話がかかるようになった。
1度外で電話していたときにかち合ったことがある
顔は「無」なのに声も口調も甘ったるくて
相手が男だというのは明白で
自分の通話を終えた後もその場を動けなかった
このまま放って置いたらやばい気がして
漏れ聞こえた内容からしても絶対まともな関係じゃない
電話を終え立ち去ろうとした和の腕をとろうとすると
気配を感じたのか寸前でかわされ、手が空を掴んだ
慌てて後ろからつかまえると
「触んな!気持ち悪い」
すぐに振りほどかれ飛んだ罵声
久しぶりに合った和の瞳は冷たく暗く何も映っていないように見えた
「お前、やめろ。身体を壊すぞ」
「あんたには関係ない」
踵を返す和は明らかに以前より痩せていて、もともと華奢な身体が痛々しいくらいだった