第12章 ラムネ瓶にのぼる月4(月島蛍)
やはりの看板は、今年もすごく目を引いた。
派手な色使いと洗練された構図は、大人も子供も驚いていた。
「こんなのも作れるくせに、ほんと、本人はどんくさいよね」
「………」
は特に何か言うでもなく、ぼーっと虚空を眺めていた。
わらわらと甚平や浴衣を着た子供たちが集まっては通りすぎていく。
一瞬で過ぎ去っていって、まるで妖怪みたいだと思った。
(なんだっけ、すねこすりだっけ?)
いらないことを考えながら、今にもはぐれそうなの腕を掴む。
神社や花火大会のお祭りと違って、趣味やサークルの集まりだったり、小学生たちの親たちが協力しあってやっているお祭りなだけあって、内容自体は凄くショボい。
それは、今も昔もかわらない。
50円で買えるかき氷の味の薄さがどこか懐かしい。
「、おばさんがずっと何も食べてないって心配してたよ。
適当になんか食べたら?」
「……」
「ねえ、どこまで皆に迷惑掛ければ気が済むの?
また倒れて皆を悲しませたいの?」
つい苛々して嫌な言い方をしてしまった。
それだけ、彼女の人望は厚いのに。
僕なんかより、ひたむきで健気なの方がなんでこんなに弱いのか。
彼女の繊細さを少しだけ僕に分けてほしかった。
はあ、と大袈裟にため息をつく。
「あ…」
「何?」
が避けきれなかった小学生のお好み焼きが、丸々一つの服装に飛んだ。