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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第11章 ラムネ瓶にのぼる月3(月島蛍)


「え?ちゃんの看板、有料になるの?」
「そう。彼女の雑用が増えすぎたから交渉して回ってんの」
「お、おじさん、ごめんね?
でも、全然安く受けるから」
おじさんはうーん、と少し考えてから、
「いや、ちゃんくらいの技術なら確かに対価を払う必要があるのかも」
と答えてくれた。
価格交渉は完成までの時給換算ということで、決着がつき、は鞄から画材をずらりと並べると、さらさらと看板に絵を直描きしていく。
相変わらずなんでもこなせて器用だと思った。
なのに、なんで普段はあんなにどんくさいのか。
不思議で仕方がない。

が作業をこなしている間に、僕は商店街で買い出しをこなした。
他の雑用も何件か時給換算して貰えないか聞いたが、皆割と納得している。
彼女の技術と人柄は、それだけ、充分だったということだ。
大まかな予定に見積もりを付けて交渉して回り、小学校へ戻ると、立派な出店の看板が完成していた。
「あとは渇くの待てばそのまま使えるよ」
「おお、今年も繁盛しそうだよ…!」
確かに目を引くその絵は、宣伝効果は抜群そうだった。
「こっちはオマケね、折り紙のわっか繋げたやつ」
「…僕の交渉が無駄になるからそういうのはなるべく作らないでよ」
「あ、おかえりー!」
「聞いてる?人の話」
「うん!でもこれは暇潰しに…」
「うん、だから、の時間は有限なんだって、この前言ったよね?」
「ご、ごめん……」
はしゅん、と犬みたいに項垂れた。
「まあまあ、少ないけどその分も出すよ」
こうして、初仕事はまあまあ上手くいった。
白いワンピースが絵の具に染まっていて、カラフルになっているのが気になる。
「、やっぱ、ジャージがいいんじゃない?」
「そう、かもね……」
皮肉を言ったつもりはなかったが、は何故かその言葉を聞いて、少し泣きそうになっていた。
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