第11章 ラムネ瓶にのぼる月3(月島蛍)
次にに会ったときにはすっかり蝉が鳴き始めていた。
「久し振り」
と彼女は笑った。
珍しく、ジャージでもなく制服でもなく、白いワンピースに麦わらの帽子を被っていて、真夏に似合う服装だった。
ノートに書いた雑用を木陰で確認してから、予定を少しずつ立てる。
例えば、小学校の校庭でやる祭りの看板の作業は少しでも儲けに出来ないか、主催に相談しにいく、等。
交渉はするからと言ってみたものの、あまり自信はなかった。
「今日、なんでいつもの服じゃないの?」
「…うん、たまには、ね?」
は誤魔化すように笑う。
そういえば、今まで、一緒にいるのが当たり前すぎて、僕は彼女をまじまじと見るなんていうことを滅多にしてこなかった。
だから、照れているのかと思った。
「馬子にも衣装って言葉、初めて理解したよ」
「うーん、敢えて褒め言葉として貰っておこうかな」
照れ隠しに少し皮肉を言ってみるも、慣れているせいかいつものように流される。
逆に思いっきり褒めてしまえばよかったと少し後悔する。
「今日、本当に1日貰っていいの?」
「そのために空けたんだから途中で帰るとか言わないでよ、面倒くさい」
「言わないよ」
僕もまた、1日、彼女にあげるのは、苦痛でもなんでもなく、同じ時を過ごせるのが少しだけ楽しみだったりした。
でも、あまりにそれは自分らしくなくて、態度には微塵も出したくなかった。