第1章 ジャンヌダルク(及川徹)
初めて、彼女が、見た目としている行動が一致したように思えた。
大声で、子供のように泣いたのだ。
「だっ、だって……!!
私の、わたしのせいでぇぇぇっ!!」
「おい、おい、俺たちより泣くなよ……っ!」
これをずっと堪えていたのか。
あの長い時間、帰りも、支度している最中も、一人学校に戻ってやっと解放されて。
そうだよな、俺たちよりこんな大泣きしたら、興醒めだもん。
そう思うと、ムカつくこの機械が、急に可愛く思えた。
最初から、そう思っていたかもしれない…。
あまりにも小さいその身体を包むと、背中をさすって落ち着くまで待った。
「わぁぁぁぁぁんっ!ううっ!
及川せんぱいたちを、わたし、ゆうしょうさせてあげらんなかったよぉぉぉ!!
ごめんなさい、ごめんなさぁぁあい!!!」
時折鼻を啜りながら、嗚咽を交えながら、彼女の泣き言をひたすら聞いた。
「あんなに、あんなにれんしゅう、ついてきてくれてたのにぃ!!
きついこと、たくさんいっちゃったのにぃい!!」
「うんうん。いいんだよ」
行き場のない言葉ばかりだった。
その強気な姿勢は、小さな身体を守る盾であり、その頭脳は、立派な矛であり、一人、大群を支えてくれた兵士が、地に膝をついて、守れなかった大群に涙を流していた。
誰も悪くない。
みんな、みんな筋を通した結果だ。
「ううっ……ひっく……」
「落ち着いた?」
「…は、はい……」
そんな鎧をガチガチに纏った、この小さな女兵が、可愛くて仕方がなかった。
どんなに綺麗に着飾ってる女より、どんな豊満な胸より、どんな愛嬌のある女より、この鼻水と涙にまみれた、童顔つるぺたが可愛かった。
(ああ、そっか)
これがいわゆる一目惚れか。
こんな形の恋もあるんだな、と思った。
「、こんな時で悪いんだけど。
が好きって、言っていい?」
「…………っ!!
馬鹿ですか?もう言ってますよ……」
「あ、そっか。うん、じゃあ改めて。」