第9章 ラムネ瓶にのぼる月(月島蛍)
「ねえ、買い出し、まだあるんでしょ?」
「うん」
「じゃあ早くそっち終わらせようよ。
あとどこのお店?数は?予算は?
こっちだって忙しいんだから」
「あ……ごめんね?
蛍ちゃん、先帰ってていいよ?」
「その買った荷物を家まで自分で運べるの?」
「………ご、ごめんね?」
の紙袋を2つほど取り上げて、さっさと先を歩いた。
近所の児童館でお祭りをやるらしく、彼女はその手伝いすら引き受けていた。
買い出しを手伝えなんて一言も言われていないけれど、がまた倒れるのを僕は何故か凄く見たくないと思った。
「ねえ、なんでまた勝手に引き受けたの?」
「勝手にじゃないよ?ちゃんと頼まれたよ?」
「……そういう意味じゃなくて」
「あ、かき氷屋さんもなんだけど、一緒にラムネもやるんだって。
飾りにね、ポンポンたくさん散らしたいんだけど、どうやって作ったらいいと思う?」
苛々しすぎて、深く深く、深呼吸をした。
「…………人の話、聞いてる?」
「ご、ごめん………」
「平テープ。簡単に割けるから」
「あ、それいいね、そうしよ。
しゅわしゅわしてそう」
もうコイツに、なんで?とか、どうして?は通じないっていうのは、100億回痛感しているんだった。
用事や雑用が彼女に吸い寄せられているんだ。
諦めてなるたけ手伝って、とにかく、また、点滴されているところを見たくなかった。
「蛍ちゃん、学校の農作物の肥料も頼まれてるんだけど、持てる?
私は家庭科の先生に頼まれたお米を担ぐから…」
「もういい、全部持つ。
早く買ってきて。
僕の筋肉伸びたらに治療費請求するから」
「ごめんね……」
僕は今日からコイツのことを心のなかで、掃除機と呼ぶ決意をした。