第9章 ラムネ瓶にのぼる月(月島蛍)
その子を見ていると苛々する。
別にいつも悪態をつきたくてついているわけじゃないんだけど、その子は別格だった。
心底から悪態をついていた。
トロいし、鈍いし、なのにいつもヘラヘラしてて、かと思えばちょっとしたことですぐ泣いて、こっちがどんだけ気を遣ってるのかわかってないところとか、ムカつく。
1つ上っていうのも凄く嫌だった。
年下だったらこっちが誘導できたりして、少しは苛々しなかったはず。
「歩くの、遅いんだけど」
「ごめんね、あそこのお店が気になって…」
「見たいなら声掛けてくればいーじゃん」
「ううん、ちょっと、見てただけ」
「あっそ」
は、近所に住んでいて、いわゆるエスカレーター式のお嬢様学校に通っている。
おっとりした性格は元々で、何をしてもグズだった。
その上、断れない性格なのか、なんでも引き受けてしまい、何度か過労で倒れたのを見たことがある。
トロいクセにすぐ無理したり、テンパったりしてて、何回呆れたかわからない。
それでも、苛々しながらも、僕は彼女に手を貸してしまう。
もう二度と無理させないように、倒れないように、つい支えてしまう。
彼女さえいなければ、もっと平穏な毎日が送れていたとすら思う。