第8章 言の葉の音に(西谷夕)
心配させてしまうのもバレてしまうのも不本意だし、顔を見て話すのも恥ずかしくてたまらない。
縮こまりそうな思いだ。
「本当、ないってば……」
なんとか、嘘でもいいから、彼との距離を取らなきゃ。
咄嗟に、そう思った。
「西谷くん、お節介だよ……。
私の介助は、必要最低限でいいのに、こんなところまで連れ出したり…聞き取れなかったところ、一緒に聞いたり……そんなの、いらない!
心配しすぎ!ありがた迷惑だよ!!」
「……そうかよ」
賑やかな彼が、私にはぎりぎり聞こえないような声で漏らす。
1人、暗い階段に置いていかれる。
また、独りだ。
静かにその場で沈みながら泣きじゃくった。
やっとついてきた勉強も、淡すぎる恋心も、何もかも無駄にしてしまった。
何日か、動く気力もなくしてしまって、学校を休んだ。
はあ、と自分で吐いた溜め息すら聞こえない。
ごろんとベッドに横になると、携帯が光ったのが見えた。
『おい、隠してただろ』
今まで自分が片付けていた嫌がらせが西谷くんに見られたようだ。
『なんで隠してたんだよ、言えよ』
『言っても解決しないでしょ』
『したかもしんねえだろ』
『しないよ』
『なんでいつも最初から諦めてんだ?』
図星をつかれて返信しにくくなる。
イヤになって着替えて図書館に行くことにした。
(もう、いい…)
玄関を開けると、携帯を持った彼は立っていた。
「なんで無視すんだよ」
聞こえるし、顔でわかる。
「なんでも、いいでしょ…」
「よくねえよ」
「西谷くん、学校は?」
「そんなもんよりお前のが大事だ」
「…っ」