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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第2章 用心棒ときまぐれ姫(菅原孝支)


「……送っていい?」
「ダメ…。私、また甘えちゃうから…」
「いいよ、それで」
「迷惑じゃない?」
「うん」
「じゃあ…」
遠慮がちに言われるのが、なんだか悲しい。
今までなら、ずけずけと人の予定も聞かずに帰っていたのに。

『部活終わるの待ってるから、よろしくね』
『や、今日、寄るとこあるから』
『じゃあ一緒に寄ってあげる』
『……はい』

すっかり日が落ちて、真っ暗な帰り道。
こんな暗い中を、最近は一人で歩かせていたのか、と反省してしまった。
こんな路地裏あったっけ?連れ込まれたらヤバイな、とか。
そんなことばかり考えながら歩いていた。
「何があったの?」
「…別れようって言ったら、怒っちゃって…」
またそういう関係のトラブルか…。
頭が痛い。
「また新しい人が出来た?」
「ううん、もう、みんなおしまいにしたくて」
「…っ」
「だって、あの人も、意味なかったから」
(また意味って…)
「さん、相手も人間だよ?
意味がないって何?失礼過ぎない?
用がなくなったらその辺に捨てるわけ?」
これは、彼女に怒っているわけじゃない。
もし、自分がそうなったらと想像している自分に対する苛つき。
そんな自分勝手にムカつく自分に、自己嫌悪もする。
「菅原くん…、ごめんね…」
「…さんは、なんで誰彼構わず付き合って、すぐ別れるの?」
「……説明しにくいんだけどね…、家で、お父さんとお母さんが喧嘩するようになってから、居場所がなくて…。
お部屋とかの意味じゃないよ?
そういうことじゃなくて、家で、私を見てくれる人がいなくなっちゃって……。
そんな時に、初めて、好きって言ってくれる人が出来た…。
きっと、この人といたら寂しくなくなるって、思ってた。
それを繰り返してる感じかな…?」
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