第2章 用心棒ときまぐれ姫(菅原孝支)
「何それ?
自分の気持ちがないじゃん?」
さんは目を見開くと、目から鱗、みたいな顔をした。
「だって、好きじゃないんだべ?
そりゃあ満足出来るわけないじゃん」
「あっ」
さんは嬉しそうな顔をする。
「私、菅原くんが好き」
「………え!!?」
何を言っているのか一瞬わからず、裏返った声で返してしまった。
「だって、一緒にいたかったから。
行きも帰りも一緒にいたかったから、だから、私変なお願いたくさんしてたんだね」
くすくすと笑うとまた嬉しそうにする。
「わかって…なかったんだ…」
「うん、そうかも。
いいね……あったかい、これが欲しかったの…」
今までも、可愛いとか綺麗とか、そんなこと思ってきたけれど、今日はそれ以上に可愛いと思ったし、少し、妖艶にも感じた。
「じゃあ、菅原くん、今日から用心棒から昇格だね!」
「……俺の気持ちは無視?
勝手にまたそうやって決めて……」
「…菅原くん、私のこと、好き?」
願ったり叶ったりなのに、また振り回してきてモヤモヤする。
それでも、自分にこれ以上、嘘は吐けなかった。
「あー…もう……好き」
まともに顔も見れなかった。
「手、繋いで」
「……命令なんだ…」
「うん。
私の作ったご飯を食べて、朝までくっついて寝てね」
「……進展早すぎない?
今日は帰るよ?」
「なんで?」
「な、なんでって…」
「あ!でも菅原くん、好きな子いるんだよね?
ごめんね?」
「…いや、それは、さんだし……あ、それでも拒否権はないんだ……」