第2章 用心棒ときまぐれ姫(菅原孝支)
「もう、無理……」
「早く止めてくれって言えばいいだろ」
「……わかってる」
他に用心棒を雇ってくれと簡単に言えればいいが、この送迎係を他に譲ってしまうと、もう二度と彼女との接点が持てない気がして、なんとなく、そのままズルズルとやってきてしまった。
「それか、コクっちまうか」
「無理!相手にすらしてくれねーよ」
「ワンチャン、あると思うんだがな」
「他人だから言えるんだって」
いつも親身になってくれる親友の言葉すら今日は流れていく。
さすがに、今回はペースが早い。
なんとなく、それが気になって、項垂れてしまう。
さんが男にだらしなくなったのは、ご両親が不仲になってからだった。
目まぐるしくも寂しい毎日に嫌気がさして家を出たらしい。
恐らくその寂しさを紛らす為の行動らしいんだが…。
(早く一人に落ち着かないかな……)
その一人に自分がなりたいという気持ちも勿論あった。
だからといって、この関係を壊すのに、俺にはまだ勇気がなく。
放課後、彼女の買い物に付き合いながら、ぼんやりとどうしていきたいか少しだけ考えた。
「ねえねえ、菅原くんはやっぱり薄いのがいいの?」
「………だから、なんで俺に聞くの?」
「…モテそうだから?」
「残念でした」
「本当に?」
「本当」
「意外だなぁ、好きな子はいないの?」
さんは、髪を触りながら首を傾げた。
それは、目の前にいて。
でも、この流れで言うなんて、出来なくて。