第10章 形単影隻
他の面々とも落ち合い、話し合った結果、ハヨンたちが赴いた土地周辺を探すこととなった。ただ、途中で白虎が移動する可能性もなきにしもあらずなので、一組だけ赤架の中心部での情報集めを頼むこととなる。
「さぁ、とっとと見つけて話をつけちゃいましょう!」
ムニルは状況が少しよくなったからか、機嫌がいい。ハヨンとリョンヘの前に立って歩き出す姿は、打ち解けてきたからこそ見せる姿のような気がして、ハヨンたちとの距離が少し縮まったようにも感じられた。
「あんまり目立ってはいけない。いつあそこから手先がやって来て、私たちのことを嗅ぎ回るかわからないからな。それに、この町のひとにも怪しまれる…」
リョンヘがムニルをたしなめる。ムニルは歩調を緩めて二人のとなりに並ぶ。
「わかってるわよ。それに、騒いでるところに白虎が現れるのも考えにくいしね…」
ムニルは声を潜めた。少し不満な様子を見せているのは、王子だからとかリョンヘへの畏れを相変わらずもっていないからだろう
ハヨン自身も本当はリョンヘもといリョンのことは友人だと思っているため、そうやって気楽にしている人が近くにいると、何だか気が休まる。
いつもより親しげに話しても、ムニルなら咎めたり畏れたりしないし、むしろ輪に入ってくるからだ。
(と言っても敬語をやめるわけにはいかないけどね…)
ムニルと違って、ハヨンはきちんとした主従関係にある。その事を肝に命じておかねばならないときの方が圧倒的に多い。ハヨンはムニルのその自由さが少し羨ましかった。