第10章 形単影隻
(私はもしかしたら、リョンの時だけでなくリョンヘ様の時の関係も変えたいと思っている…?)
ハヨンは思わず足を止めた。ずっと王族に仕えてあのときの恩を返したいと思っていたのに、そんな気持ちを持ってしまったことが驚愕だった。
(自分は何を言ってるんだ。自分で決めたことなのに…。リョンの時だけでも十分だろう。なぜこんなにもリョンヘ様と仲良くなりたいと…。いや、親しくなるのはいいことだけど、私が求めているこれはきっと…)
ハヨンはもやもやと頭のなかで考えて出た答えに、自身の中で何か大きな変化が起こったことを感じた。
(これは臣下としてではなくて、私自身を一人の人としてリョンヘ様に親しく思って欲しいし、皆の前でそのように振る舞いたいということだ…)
いつの間にこんなにも自分はリョンヘに求めてていたのだろうか。ハヨンは少し前を歩くリョンヘを見る。この欲はいったいなぜ生まれてきたのだろう。これは友達だと思っているから沸いてきた気持ちなのだろうか?それにしては何だか重たいもののようにも感じる。
ハヨンはこの気持ちに何と言う言葉を当てはめればいいかわからなかった。
「ハヨン?何かあったか?」
リョンヘが少し後ろで立ち尽くすハヨンを振り返った。
「…いえ、何でもありません。行きましょう。」
ハヨンは駆け足でリョンヘのもとへ追いつく。そして再び三人で並んで歩き出した。