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華の剣士 2 四獣篇

第20章 己の力


「じゃあソリャもハヨンも自分の力が四獣のものかどうか判別するのはまだ難しそうだし、私から言おうかしらね。」

そう口火を切ったムニルに、ハヨンは感謝した。ハヨンは自分の出来ることを必死に思い返していたのだが、イルウォンに向かって火を吐いたことと、飛べることとぐらいしか思いつかなかったからだ。ムニルのようにそんな大層なことが出来ただろうか、とぐるぐると考え込む。

「と言ってもこの城に来て結構時間も経ったし、いくらかは知ってると思うんだけどね。私は水を扱えて、青龍の姿では体内から水を作り出すことも出来る。だから、戦いの時に口から水を出すこともできるし、霧を作り出すことも出来る。試したことはないけど、近くに川とかがあれば、氾濫とかも起こせると思うわよ。あとは人間の姿のままでも水面を歩いたり、水中にいつまでも潜れるとか。」

特に大したことではない、というようにさらりとムニルは言ったが、ハヨンは新たに知った情報にとても驚いた。人間の姿のままでも出来ることはあるのだ。確かに、ソリャはその姿のままでも、人の何倍もの高さを跳躍したり、獣のように俊敏だった。しかし、ムニルが人間の姿で何か能力を使うところを見たことがなかったので、考えたこともなかった。

「あっ」

そんな時、リョンヘが何か気になるところがあったようで、声をあげた。

「俺たちが王城から追い出された時、偶然ムニルと会った訳を聞いた時、ムニルは友達が城の堀に落し物をしたから、それを探していたって言ってたな。どうやって探してたんだと思っていたんだが、それは水面を歩いていたってことか?」
「そうよ。それに水面を歩いていて、兵士に見つかりそうになったら水中に潜ればいいしね。適任だったわけよ。王族のあなたの身に危機が迫ってたから、四獣の本能でそっちに行っちゃったし、結局見つけられなかったんだけどね。」

ムニルは肩をすくめる。ハヨンもようやくあの時のことに合点がいった。そして、ムニルの言葉にはっとする。

「そういえばリョンヘやその他の王族の人に危機が迫った時、気がついたらその人を庇ってた時とかよくあったなって思ってたんだけど…あれは、四獣の本能だったのかな」


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