第10章 形単影隻
赤架に入って、まず二、三で一組となって方々へ散った。先日白虎の捜索から帰ってきた班の報告からすると、どうやら白虎は赤架にはいるもののこの郡内をさ迷っているらしいのだ。
リョンヘとムニルの三人で赤架の中心部へ向かうハヨンは、白虎の置かれた状況が予想よりも遥かに厳しいものに思えてきて戸惑っていた。
(…さ迷うって言うのは、帰る家がないのかな…)
なぜ、と考えてしまうが、何も情報が無いために正しい憶測は一つも出てくることは無いだろう。
「二人とも、お腹すいてない?」
唐突にムニルがそう言った。リョンヘとハヨンは白虎をどう探し、話をするかで頭がいっぱいになっていたため、先程まで黙りこくっていた。そんな中でのムニルの一声はあまりにも突拍子な物で面食らった。
「い、いや…空いてないけど…」
「私もまだ何か食そうという気分では無いのだが…。ムニルは腹がへっておるのか?」
ハヨンとリョンヘがそう答えると、ムニルはあきれたように肩をすくめた。
「もう、情報を集めるならまず人が集まるところが一番でしょ。それに、人って言うのはお腹が満たされてると口が緩んで色んなこと喋ってしまうものなの。」
「な、なるほど…」
王都でも孟でも城内での仕事ばかりでハヨンは偵察などの仕事をしたことがない。ムニルの言葉に納得しながら、自分の機転の気かなさに少し恥ずかしくなった。
(そりゃそうだ。誰かに声をかけて、この町でのけ者扱いしている人の話を聴いてみるなんて無謀かもしれない…。私たちは明らかにこの町の人ではないし、怪しくてしょうがない。大した情報をくれるのかどうか…)