第10章 形単影隻
「白虎が…?なぜだ…。」
「…わかりません。ただ、少しだけ赤架の民にも話を訊いてきたのですが、どうやら魔物の子とか、穢らわしいといっている人もいて…。」
そんな扱いを受けてなお、とどまる白虎も不思議である。
「何にせよまずは話を本人に聴いてみないとな。ありがとう、ご苦労だった。班の者に、休むように伝えてくれ。」
リョンへがそう伝えると、部下は形のよい敬礼をし、その場を去っていった。
「明日からさっそく、リョンヘ様自ら捜索されると言うことですが、他に付いていくものはどうしましょう。」
後にリョンヘの執務室に呼び出されたセチャンは、部下の予定について書き込まれている巻き物を取り出して腕組みしていた。
この城では、人数も少ない上に、急な予定変更も多い。予定を調整する役目を担っているセチャンは、しょっちゅう組み替えねばならぬのが悩みの種だった。
(せめてあと数人いれば、もっとこの組み替え方も融通がきいて楽になるのだがな…)
もう、持ち場の人数もぎりぎりで、いっぱいいっぱいなのだ。
「これはわがままなのかもしれないが…。ハヨンは連れていきたい。彼女は私の護衛だからな。あとはチェヨン殿にもできればついてきてもらいたい。彼女は四獣について詳しい方だからな…。ただ、ご老体には、旅はきついかもしれないから、彼女の意見もきかねばならないが。」
そう言いながら、リョンヘは期待に少し心を踊らせていた。町の噂が気になるものの、少しでも父や兄の元へと戻る手がかりになる人物に会えるからだ。