第10章 形単影隻
白虎を捜索していた班の者達が帰ってきた。皆、足取りが軽く、何か有力な情報を掴んだのだと出迎えた者達は悟った。
「何!?赤架だと!?」
部下の報告を聴いたリョンヘは、刷毛を取り落とした。刷毛が乾いた音を立てて転がる。最近、彼は王族の者なら普段することのない仕事にも意欲を持ち、皆が止めるのも構わず行っている。ちなみに今は厩で馬の世話をしているところだ。
「はい。どうやら元にいた白虎は十年以上前に他界されたそうで、今の白虎は数年前に赤架にふらりと現れたのだとか。」
「赤架か…。まさか隣の郡だったとはな。しかしまぁ、元よりも近いところではあるし、白虎を探しやすい場所だ。」
リョンヘはそう言いながら、先程取り落とした刷毛を拾った。その時、ふと部下の顔を見直すと、何やら不安そうな顔をしていた。
ついさっきまでは誇らしげに結果を報告していた彼だが、何かあったのだろうか。
「何か浮かない顔をしておるが、体調が優れないのか?四日も身を隠しながら白虎を探したのだから、疲れたのだろうな…。お前達はよくやった、今日と明日、ゆっくり休め。」
リョンヘがそう優しく声をかけ、肩に手をかけると、部下は慌てたように手を振った。
「えっと、確かに少し疲れてはいるんですが、違うんです。実は心配事がありまして…」
「心配事?」
リョンヘがそう問い返すと、部下は唇を少し噛み締める。
「…実は、どうやら白虎は…。町では嫌われ者のようなんです。」
リョンへは大きく目を見開いた。昔、伝説の生き物として崇められた白虎が、そのような事になっていると、思ってもみなかったからだ。