第2章 異変
「リョンヘ王子及び王への反逆者を捕らえよ!抵抗した者たちが命を落としたとしてもお咎めは無しとする!」
つまり抵抗した者は殺しても構わないと言うことだ。これはきっと新たな王にたてつくものたちがどうなるかの見せしめにも利用されるのだろう。
(私はリョンヤン様にリョンヘ様をお守りするように直々に命を受けた。あの命は確実に心からのものだった…)
それにハヨンはリョンヤン王子を部下として慕っていた。この方についていきたいと思っていた。そしてリョンヘ王子の考え方を好ましいと思っていた。なにより裏の顔である旅芸人のリョンは友と思っている。リョンヤン王子の命に従い、リョンヘ王子を守りたい。
以前は王族に仕え恩に報いることが夢だったが、もはや今は王子だからというよりもリョンヤン、リョンヘ個人を守りたい、願いに力を貸したいと思うようになっていた。
(こんなにも思いというのは変わるものなんだな…)
ハヨンはすこし笑む。そして刀をすらりと抜いた。セチャンも同時に刀を抜いている。
もはや平穏に城へ戻ることはできない。
(リョンヤン様、どうかご無事で)
おかしくなってしまった城内に残されたリョンヤンを案じながらハヨンは構えた。
「お前たち、そんなことをしなくて良い。私一人が捕まれば良いことだ。お前たちのような優秀なものを捕らえたり命をおとさせる必要性はない!」
といいながらリョンヘが輿から無理矢理飛び降りた。
「…リョンヘ様。申し訳ありませんが、これは私が決めたことなのです。」
ハヨンは構えた姿勢を崩さぬまま、そう答えた。そのためリョンヘがどのような表情をしているかは知れないが、嫌がっていることは伝わってきた。
「行け!」
城の正門に控えていた指揮官に命じられ、ハヨンたちと敵対することになった一行の一部の兵と、城の兵たちが襲いかかってきた。