第2章 異変
「このままリョンヘ王子の連行を拒むようなら、お前たちも王への反逆とみなして捕らえるぞ」
周りの者たちはざわめいた。自身も巻き添えを食らうのは嫌だからだ。その場で一行は二手に別れた。
リョンヘ王子を守るべく輿の周りを取り囲んだ者と、その周りをさらに取り囲み、リョンヘ王子を捕らえようとする者だ。
ハヨンはリョンヘ王子を守る方にいる。
「良い、お前たちを巻き込むわけにはいかない。それに私は無実だ。証拠もかなり怪しい。何とか免れると思うのだが」
輿の中からハヨンたちを諌める声がする。
「いえ、むしろあのような証拠でみながこのように武装し、我々を迎えた様子では、城の中はおかしな権力を持ったものがいるとしか思えません。これではどんなにあなた様が潔白でも証明しきれません」
ハヨンは思わず低い声でそう返した。
「その我々を捕らえるという命はどなたからのお達しだ」
セチャンは低く構えながら伝令を睨み付ける。次の言葉でハヨンは息が詰まった。
「リョンヤン陛下でございます」
どよめきが走った。なぜすでにリョンヤンが王位を継いでいるのか。そもそも王は誰が王位を継承するか決めていなかった。
その中で独断で決められた王。そして理不尽な命を出す王。それが本当にリョンヤンなのか。
ハヨンは滓に出立する前に、リョンヘの身を案じていたリョンヤンがそのようなことをするとは思えなかった。
(リョンヤン王子は心優しいお方だ。公平さを持って審議なさるような方だ。このようなことをなさる方ではない。ならば…)
ハヨンの思いは固まった。