第9章 王子の休日
「こんなにすることがないのは初めてかもしれないな…」
リョンヘは静かな声でそう言った。
「リョンは働きすぎだから、一日だけでもゆっくり休まないと、体壊れてしまってもおかしくないよ。」
リョンは王子である前に、人なんだから。
ハヨンはそう付け加えた。これがただの王族と部下だったら、下手したら不敬と言われてもおかしくないことだ。
「人か…。俺もずいぶんと忘れていた気がする。別に俺が神のような人物だとは思っていない。でもな、人々の責任を負う一人として、しっかりやらないとと思っていたよ。確かにそうだけど、それでは心に体がついてこないな。」
リョンヘは力無く笑った。どうやら己が疲れている自覚はあったらしい。
「そうだよ。私もセチャン様も、リョンヘが倒れないか心配してたんだから。主の一番の仕事は、部下を心配させないことなんだよ、リョン。」
ハヨンはそう言ってリョンヘをたしなめる。これは国においても当てはまる。国民や部下を心配させる王に、ついていくものは限られるだろう。
誰でも力強く、迷わず、正しい道へと導いてくれると思わせてくれる人に、ついていきたくなるものだ。
「なら今日は…少し眠るかな。」
リョンヘがふわりとあくびをした。彼の目の下には濃い隈が居座っていた。
「見張りは任せて。あと、もし仮に、誰かからの連絡が来たりしたら、私が取り次ぐから安心して。」
それが今日の彼女の本当の仕事だ。