第9章 王子の休日

セチャンの言葉を聴いて、リョンヘは笑い出した。ハヨンとセチャンは突然のことにたじろぎ、少し後ずさる。


｢最初は妙だと思っていたが、もうこれは確定だな。誰かが私に仕事をさせないようにしている。どちらだ？｣


リョンヘはそう言いながら二人を見比べた。


｢どちら、とは？｣


セチャンがいつもより堅い声音でそう返したのは、少し緊張しているからだろう。リョンヘは少しにやついていて、この場にいる二人をからかってやろうと思っているのが見てとれた。


｢わかりきっていることであろう。どちらが首謀者だ？｣


こんな物言いだが、けして怒っているわけでも責める気も無さそうだ。


｢言い出したのは私でございます、王子。｣


ハヨンは謝罪の意を表すべく、少し頭を下げた。


｢そうか…。最初から何か変だと思っていたんだ。しかし今ではお前たちの魂胆も透けて見えたぞ。たしかに私は仕事ばかりしている。だがな、それは別に不本意ではないのだ。…。｣


言葉を探しているのか、リョンヘは少しの間口をつぐむ。


｢しかしまぁ、部下に心配されたら元も子もない。今日はありがたく休ませてもらう。心づかい、感謝する。｣


リョンヘは背を向け、もと来た道を歩き出した。ハヨンは慌ててその後を追うのだった。



｢さて。今日の予定が無くなってしまったし、今からどうするかな…｣


執務室に戻ったリョンヘは、部屋をぐるりと見回す。そうすれば何か仕事が現れると思っているかのようなしぐさだ。



(完全に仕事が生活になってる…)


呆れ半分、尊敬半分でハヨンはそう心のなかで呟いた。