第9章 王子の休日
「よし、ハヨンのおかげで速く終わった。今から町の視察に行くぞ。」
「うん。お供するね。」
事前に聞かされていた通りの予定だ。リョンヘは少しうきうきしているのか鼻歌混じりだ。
「今日はいつもより長く視察ができるな。」
「良かったね。」
ハヨン達は厩舎に向かう道すがら今日の視察についてあれこれと話す。やはり王都にいたころから、お忍びで何度も町に行っていたので、町の人の生活を見るのが大好きなようだ。
(この公務は代わりにしなかった方が良かったかな…)
あまりにも楽しみにしている様子なので、ハヨンはちくりと心が痛んだ。
「どうした?今日は少し元気がないな。」
あまり反応しても芝居がかってしまうと心配したハヨンは、相槌に徹していたのでぎくりとする。少し前を歩いていた彼が足を止めてまで心配しているのを見て焦りが生まれた。
「い、いえ!私は今日もこの通り元気ですよ。ご心配をおかけして申し訳ありません。」
ハヨンは元気だという証拠に力こぶを作ってみせる。元気の証となるのかはいまいちわからないが。
「いや、私の取り越し苦労ならそれでいいんだ…。先を急ごう。」
そう言って再びリョンヘは歩みを進める。ハヨンは上手く誤魔化せたようなのでほっとした。
「今日はいい天気だな。ここのところ雨が多かったから、これぐらい暑くても気にならない。」
今日は夏ということを太陽達が強く主張していた。空は高く澄んでいて、深い青が広がっている。
「そうですね、城下の人も農作業にいそしんでいるでしょう。」
ハヨンは太陽を眩しそうに目を細めながら見つめた。