第9章 王子の休日
「今日は予定が変更されて、ハヨンが一日護衛をしてくれるらしいな。」
朝一番にリョンの執務室へ向かい、ハヨンが部屋に入ったとたん、彼はそう言った。
「そうなの。どうやらヨンスが昨日、風邪をひいたらしくて…。それで役割をいろいろと交代したの。」
二人きりの時はすっかりリョンとハヨンの時の距離感だ。
そして、ヨンスが風邪というのは大嘘である。ヨンスは城から一番遠いところの警備を頼んでいた。
「そうか…。あいつにも無理をさせてしまったかな。配置もちゃんと考え直さないとな…」
とリョンが気の毒そうな表情をし、考え込み始めたので、ハヨンは慌てた。リョンヘを心配させるためにこんなことをしたのではないのだ。
「ち、違うよ!ヨンスは最近変な鍛練にはまってて、夏だからと言って昨夜は冷水浴びる鍛練をやりつづけてしまったの。それで体が冷えちゃって…」
となんとも苦しい言い訳を口にしてみる。そのあと、ばれたかもしれないと冷や汗をかいたが、リョンヘはヨンスへの心配で一杯になっており、特に言及はしてこなかった。
(…こんなんで大丈夫なんだろうか…。)
ハヨンは己の演技の下手さに少し悲しくなる。
「そうだ、今から蒙の砦を改修するための書類を書くんだけどさ…」
ハヨンは後ろ手に持っていたものをさっと差し出す。
「実は…!書いてきちゃったから、後はリョンの書名だけでいいの…!」
さすがに書名まで書いてはいけないと思い、事前に用意したのはそこまでである。
リョンヘは思いもしない展開に目をぱちくりさせた