第9章 王子の休日
「なんだと…?」
書状をしたためていたセチャンは、ハヨンの言葉に眉を上げた。筆を止めてようやくハヨンを見る。彼も忙しい人物の一人なのだ。休み時間の彼は、大抵は自主練習や仮眠をとっているのを見かける。
(セチャン様にもまたゆっくり休んでもらう期間を作りいな…)
とハヨンは心のなかで決めたが、とりあえずもう一度彼に説明を始める。
「リョンヘ様は休憩時間も部下の手伝いをしていて、休んでいる姿を1度も目にしたことがないのです。…さすがに就寝はされているのですが、それも夜遅くになってからで…。このままでは王子の体調にも影響があるのでは、と思うのです。」
セチャンは険しい表情だ。彼の返事が得られるまでの間、ハヨンは少し気まずかった。こんな大変な時期に何を言ってるのかと注意されるのでは無いかとさえ考えた。
(さすがに王子も体を壊すまで働け、などとセチャン様はおっしゃらないだろうけど…。)
ハヨンも難しい願いなのはわかっていた。今でも部下達の仕事はかなり過密なのだ。
「確かにそれは私も心配していたんだがな…。前にそう王子に申し上げたら、"私だけのうのうとしてはおれぬ"と少し不機嫌なご様子だったのだ。それからは、な…」
もうすでにセチャンは気づき、行動まで起こしていたのを知って、ハヨンは少し負けて悔しいような気持ちになった。彼のことに気づけるのは自分が一番だと何となく思っていたからかもしれない。