第8章 四獣のさだめ
「そうじゃよ。あんたが思っているよりも、初代の王は普通だったってことさ。」
老婆はふっと優しく笑いながら菓子を噛んでいる。こんなにも優しい顔をしているのを、ハヨンは初めて見た。
老婆は王族など怖くないと言った発言をしているものの、そうやって昔の王の話を楽しそうにするので、ハヨンは不思議でしかたなかった。
(王族に恨みがあるとかそういったことでは無さそう…)
老婆はあまりにも己のことを話さないので、王族を嫌い、リョンヘ達を利用して王政を混乱しようと目論んではないのかとまで頭によぎったことがあった。しかし老婆は、ハヨンが考えもしないような理由でここにいるのかもしれない。
「チェヨンさん」
しばらく二人で菓子を賞味したあと、ハヨンはこう尋ねたら。
「青龍、いやムニルは霧を出していました。四獣はどんな力を使うことができるんでしょうか。」
四獣の力は偉大だ、強力だと伝説でも語られているし、老婆もたくさんの兵を集めるよりもいいと言い切っていた。
しかし実際のところ、ハヨンや城にいるものはそう言ったところを知らないのだ。
「うーん、そうだねぇ…」
チェヨンは手についた菓子のくずを、くずかごに捨てながら少し視線をさ迷わせる。思い出しているのだろう。
「四獣の力は代々違っていたね。ただわかっているのは青龍は水を、白虎は地を、朱雀は火に関する力を持っているということさ。それにムニルは霧を操る力だけでは無いだろうね。」