第8章 四獣のさだめ
白虎の捜索が難航していた中、ハヨンは仕事の合間を縫って老婆のもとへ足しげく通っていた。なぜなら少しでも四獣の情報が欲しかったからだ。
きっと老婆もなぜ彼女がこれほどにも構ってくるのか、理由は察していただろう。しかし、けして嫌がるそぶりは見せなかった。
「ああ、今日も来たんだね。」
今日もハヨンは老婆の前に姿を現した。
「はい、今日は厨房の方から菓子を少しいただいたので、チェヨンさんにもおすそわけしようかと思いまして。」
ハヨンはそう言って小さな包み紙を老婆に見えるように軽く掲げる。さっそく包みを開くと小さな揚げ菓子が無数に入っていた。
「おや、懐かしいねぇ。わしも若いときによく食べたものだ。」
目を細めて笑う老婆は、どうやら当時のことを思い出していたらしい。
「この菓子は初代国王が即位なさった頃から、寸分たがわず受け継がれてきたそうですね。私や他の人が生まれるずーっと前からあるっていうのもなかなか不思議なものですね…」
老婆は早くも菓子を口に放り込んでいた。菓子を噛む小気味良い乾いた音が聞こえてくる。
「初代国王のお気に入りの菓子だったから、長い間作られ続けているんだろうねぇ…。城の厨房で勤めたやつらが、そのことを自慢げに話して、みなが真似して…という連鎖だろう。それに、王族らしからぬ素朴な菓子じゃからのう…」
「ええっ、これ、初代国王がお気に召されていた菓子なのですか…!?」
ハヨンは初耳でなおかつ意外な情報で仰天した。