第8章 四獣のさだめ
「何も驚かんでいい。わしは長いこと四獣の行方を追っていたんじゃ。別段見つけても関わりを持とうとはしなかったがの。」
大したことの無いような口ぶりだが、どこに生まれるかわからない、たった四人のことを調べるなど、とても難しいだろう。
「それに場合によっては見つからぬこともある。現に今の代では朱雀はわかっておらんのだ。」
そのときムニルが老婆の方へと身を乗り出した。少し椅子が物音をたてる。彼にしては荒々しい動作から、どうやら動揺しているらしい。
「なら、私のことも知っていたの?」
「まぁな、幼い折にわしは一度あんたを見つけたよ。」
「…そう。」
ムニルの表情は少し暗く、その後は静かだったが老婆は何も言わなかった。
「ならば今のところは分かっているのは白虎と玄武か。」
「探すなら白虎の方がいいだろうね。白虎はまだ孟に近い元に住んでいたはずだ。」
リョンヘの言葉を受けて、老婆は即座に答えた。
たしかに元は西隣の郡を挟んだ向こう側にある。当分の目的が定まり、みなの雰囲気も少し活気づいてきた。
「ならば週に何度か班を作り、交代で訪ねるのはどうでしょう。」
セチャンがそうリョンヘにとうた。リョンヘも異論は無いらしく、頷く。
「そうだな。もし私が居ないときに見つかったら、見つけ次第白虎に声をかけて会う約束を取り付けてもらえぬか。そしてすみやに私にも報告して欲しい。」
「承知いたしました。」
(白虎の人はどんな人なんだろう…)
これからセチャンが班を決めて行くだろう。ハヨンは伝説の人物に会えることに少し胸が高鳴っていた。