第8章 四獣のさだめ
「…私は権力を持つものたちのどろどろした関係は大っ嫌いなのよ。だからできるなら関わりたくないと思っていたのよね…。でも、もう遅いわね。あなたに力を貸した時点で関わってる…。いいわ。力を貸す。でも貸すというなら何か私は見返りを求めてもいいのかしら?」
ムニルはそう言ってリョンヘを見返す。微笑んだその表情は諦めからか、もしくは観念したからか。
そして彼は見返りを求めていいかと尋ねてきたが、これはどう考えてもあるのかと訊いてるようなものだ。これが彼の条件だろう。
(最近は見返りを求めるのが流行りなのか?)
老婆が力を貸すと約束したときもそうだったことを思いだし、ハヨンは少々間の抜けたことを考えた。しかし人と言うのは善意だけで動くのは少ない。何にしても動機付けは見返りが大きいだろう。
「…私は。今は何も持ってはいない。しかし、出来ることには応えようとは思う。ムニルは何が望みなんだ?」
そうねぇ、とムニルは目を伏せながらぽつりと呟く。しばらく考えていたようだったが、
「穏やかに暮らせる家が欲しいかしら。」
と答えた。
老婆の時もそうだったが、これもまた意外な返答である。
(どちらも並大抵な人生を送ってないんだろうなぁ…)
ハヨンは老婆とムニルの対照的な姿を見比べながら考えるのだった。