第8章 四獣のさだめ
「…それは王族の誰でも当てはまるのか?」
「ええ。ただし、自分の目の前で起きたことだけにしか対応できないわよ。後は自分の意思しだい。だから、離れてしまえば私はあなたを守らないということもできるの。」
ムニルはリョンヘの問いにあっさり頷いた。もしかすると、観念して全て質問に答えてしまおうと思っているようだ。
「なら、この前の城でのことは…?」
「あのときはね、お城のお堀に簪を落とした女の子のために探しに来ていたのよ。水があるところは私の方が探しやすいからね。」
そこで偶然取り囲まれているリョンヘ一行を見かけ、四獣としての本能が働いたらしい。
堀に落ちた簪をどう探したのか。なんの力も持っていないハヨン達には疑問だった。しかし、今の会議の内容は援護を誰に求めるか、そして四獣に助けを求められるかということだ。話題が逸れてはいけないので、いつか尋ねようと心にとめておく。
「…四獣は朱雀、白虎、玄武の三人がどこにいるかだな…。ムニル。」
リョンヘは珍しく彼を名前で呼んだ。今まで青龍とも名前でも呼んでこなかった彼が、急に呼び方を決めたのは、もしかしたら彼との関係性を自分の中で決めたからかもしれない。
ムニルも大して嫌そうな表情も見せず、リョンヘの視線を受け止めた。
「私は以前、あなたに仲間になってほしいという願いを断られた。でもやはり、あなたの力が欲しい。あなた無くしては私は兄弟も城にいる仲間も助けられない。どうか考え直してはくれないだろうか?」
浮かない表情ではあったが、ムニルは彼の言葉を遮ること無く耳を傾けていた。