第8章 四獣のさだめ
「しかし、今のあの城の中にいる反逆者が表向きには正しいとされ、やつに従わされているリョンヤンによって国が動かされる。そうだろう?そして私が表向きは反逆者だ。父上を弑虐(しいぎゃく。殺したこと。)した犯人だ。そんなとき同時に徴兵をすると言ったら民はどちらに動くと思う?」
答えは決まりきっていた。
みなが静まり返る。
「私は真実を知らぬ民達が向こうに行ってしまうのを避けたい。そんなことが起これば、反逆者にいいように使われ、いつか捨てられてしまうことも考えうる…。それに、何も働きかけぬより、訴えかけた方が私たちについてきてくれる可能性が出てくるだろう?…私はたとえ数が少なくとも、そういう人を迎え入れたい。」
リョンヘはよくリョンとして、旅芸人に扮し町を歩いていた。彼は城下のことをよく知っている。民達のことはどの王族、どの貴族よりも熟知していた。しかし彼は、民達の近くにいたとは言え、民の生活のごく一部しか見ていない。現実は彼の思っている以上に厳しいだろう。
軍には平民の出身の者も多いので、この場にいた大半は目を伏せ、浮かない顔をしていた。
「…そんなまどろっこしいことをしなくともね、あんたには強力な味方がいるんだよ。」
その場を見かねたのか、老婆がその沈黙を破る。皆が視線を一斉に彼女に向ける。礼儀正しく座っていた彼女はいつの間にか椅子の上であぐらをかいていた。