第8章 四獣のさだめ
リョンヘは王族でありながら、獣を操る力がない。と言うよりも、幼い頃に襲撃され、その際に記憶と共に操る力を失ったのだ。
それまでは将来有望とされていた彼は、その日から一転して落ちこぼれと言われることになったのだ。
この気まずい沈黙に、老婆も気がついたらしい。何があるのだ、とまでは声にはしなかったが、表情から見てとれた。
(こんなの本人の前で言えない…。)
この国の常識となっている王族の力。その力がない王子と部下のみなが口にするのは難しいことだ。
「…何やらダメな理由があるようだね…。私はそこまで深入りして訊かないから安心しとくれ。」
老婆の言葉に、その張りつめた空気は少し緩んだ。
「王子。」
その時この城ではリョンヘの補佐をしているセチャンが静かに手を挙げる。
「なんだ。」
「一つ質問してもよろしいでしょうか。」
「構わぬ。続けよ。」
セチャンの言葉でだんだん周りの人々もほっとした表情を見せる。彼が話したことで、気まずさが和らいだのだろう。
「王子はもしや、それらの当てはまる郡、そして滓までもまわられる訳ではないでしょうな?」
「そのつもりだが?」
そのあっさりした返事に、一部の者がざわめいた。ハヨンはリョンヘの性格上それもあり得ると思っていたので、少しこの生真面目な王子に相変わらずだと呆れるだけだった。
「そ、そんなことをしては何年かかることになるやら…!そんなことしていたらあっという間に私達が攻め入られてしまいますよ!?」
セチャンの言うことは最もである。さすがに分担して行わねばならぬだろう。