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華の剣士 2 四獣篇

第7章 錯綜


「違うのです、父上。同盟を結んだときに立ち会ったリョンヘ殿が、城を追い出された…いや、城に入れてもらえなかったのです。」


「その事は聞いている。周辺の国々を諜報をしているものたちがいち早く私に伝えてきた。リョンヘ王子が逆賊だったと言うのだろう?」


滓は武器を商売とする国だ。自分達の武器で他国に攻めいられるのはとてつもなく情けない話だ。そのため武器を売る相手を慎重に見極める必要がある。だから他国よりも諜報への能力がずば抜けていた。


「…父上はその話を信じていらっしゃるのですか。」


ヨンホの眼差しは、まさに反抗する時に、怒りを沈めようとこらえながら見てくる少年のようだった。久しぶりにヨンホの余裕のない姿に、王は何やら懐かしさを感じた。


王も、リョンヘが父親の暗殺を企てるような者には思えなかった。生真面目に執務を行いながらも、人への気配りを忘れない。ただ、彼は人が良すぎるのと、自信が無いところが欠点のようにもみえた。その欠点は、反逆者としては似つかわしくないものだ。


「いや、私も怪しい話だとは思っている。しかしな長いものには巻かれろ、と言うだろう。自国のことならまだしも、他国のことだ。こういう場合は波風立てずにおさめた方がましだ。」


王は諭すような優しい口調でヨンホに語りかける。王位を継がないにしろヨンホはいずれ、国を治める中心的存在になる。そのためには必要なことだからだ
しかし彼はこの国の男らしい、人情に篤く、頑固なところがある。


「…私はリョンヘ殿を友のように思っているのです。」


王は、こういうところを父としては無くしてほしくないと思いながらも、治世者としてはあまり褒められないなと複雑な気持ちになるのだった。



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