第6章 逃す
「私みたいな人…ですか」
(私のように武人になった人…?それとも…)
先程の彼女の質問から彼女は薄々感づいてしまった。
「そうじゃ。あんたみたいに赤い目をもつ人じゃよ。もう随分と昔のことだが…。」
(私の…親戚だろうか。)
それならばこの瞳の色も少しは説明がつく。どこからその瞳をその人が受け継いだという謎がまた生まれてはくるが。
しかし彼女は、眉間に皺をよせ、何か物思いにふけるかたわら、ハヨンに話しかけているようだ。
「しかし、私の聞いた話では、赤い瞳は男にしか現れないはずなのじゃ。これはいったい、どう言うことなんだろうねぇ…」
(男にしか現れない…?)
自分は間違えて女に生まれてしまったのか…?などとハヨンの考えはあらぬ方向へと進んで行く。
「チェヨン…さん。」
様はやめろと言われたので、ハヨンは何とか呼び方を変える。彼女はハヨンの方へと向き直った。
「何だい?」
「…その、男の人が赤い瞳を持つというのは、何か訳があるのですか?」
「…そうだねぇ、確かにある人達にはとてつもなく大きな意味を持つことになるよ。」
ためらうように老婆は答えた。これ以上踏み込んだ質問をすると、彼女は答えてくれないかもしれない。ハヨンはその反応を見てそう感じた。
チェヨンは多くのことを隠している。まだ知り合ったばかりだからと言うこともあるが、ハヨン達を本当にその秘密を語って良い人物なのかはかりかねているのかも知れない。