第6章 逃す
「ふむ…そうなのかい…」
何やら彼女は思うところがあるようなので、ハヨンはそっとしておこうと考えた。老婆の様子を見ながら自分にあてがわれた部屋へと向かう。老婆はそれきり部屋に着くまで、難しい顔をしていた。
ハヨンの部屋となった所は、当初女性は一人だけだったのでこじんまりとした部屋だった。しかし清潔で、日当たりのよいところだったので、怪我人の彼女を気づかったということもあるかもしれない。
「なかなか良い部屋ではないか」
老婆も窓の方へと目を細めて見ている。夕方で、日射しが少しきつかったのだ。
「私も今日初めてこの部屋に入ったので、ちょっと勝手がわからないのですが…。とりあえず椅子にお掛けください。」
ハヨンは部屋の隅にあった椅子を運んでくる。
「ありがとうねぇ。でも、それならあんたはどこに座るんだい?」
「私は寝台がありますので」
ハヨンはにっこり笑って寝台を叩く。そして彼女が座ったのを見届けてから腰を下ろした。
(…やっぱりチェヨン様が寝台の方が良かったかしら)
背の低い彼女には椅子は少し高かったようで、足が微妙に床についていない姿を見て、ハヨンは少し悩んでしまった。
「私は以前にあんたみたいな人を見たことがあるよ」
と、ハヨンの心配をよそに、彼女が話を始めたので、姿勢を正してハヨンは老婆の話に耳を傾けた。