第2章 異変
「ハヨン、何を見ている」
「リョンヘ様」
帰路の途中、野原でみなが休息をとる間、ハヨンは燐の方へじっと視線を凝らしていた。
「何やら胸騒ぎがするのです」
ハヨンはリョンヘに視線を向けてそう言った。
「胸騒ぎ?何か不安なことでもあるのか」
リョンヘは訝しむ。滓との同盟も無事に結び終えた。これで謀反を画策していたものも行動を控えるだろう。そうハヨンとリョンヘは話し合っていたのだ。城内の風向きは良い方へと変わるのではないのか。
「わかりません」
ハヨンはゆるゆるとかぶりを振った。
「何かはわからないのですが、不安にかられるのです。正体がわからないのでさらに…」
「あまりそう悪い方へ考えてはいけない。このところ城内は不穏すぎた。そのせいでお前も悪い方へと考えてしまうのだろう。」
「はい」
そのとき立ち込めていた暗雲から、雨が降ってきた。ずっと降らずに耐えていたのに、我慢しきれなかったような、そんな雨だった。すぐに雨足は強くなる。
「皆のもとへ戻ろう」
「はい」
ハヨンは踵を返したリョンヘを慌てて追う。
夏の生暖かい風が一瞬ハヨンの首もとを撫でていった。