第5章 新たな仲間
彼が王の素質として足りないところは、部下は必ずついてくるという自信だ。部下はその気なのに、彼らは無理をしていないかと踏みとどまってしまうのだ。
「…ごめんなさい、声を荒げてしまった…。私がここにいるのは、確かにリョンヤン様の命も理由の一つ。でも、私はリョンヘ様のことも、…もちろんリョンにだって力を貸したいと思うの。これは忠誠心とかじゃなくて、私が二人を慕ってのことだから。これは自分の意思なの」
ハヨンはあまり人にあなたを大事だ、と言う事をしない性分だ。そのためどちらかというと行動で示そうとする。そのためこの事を話すのも少しだけ恥じらってしまった。
(こういうこともはっきりと照れずに言えるようになりたい…)
母親にだって日頃感謝を伝えるとき、はにかみながら言ってしまう。そのような時は決まって後で自分を恥ずかしく思ってしまうし、今も自分の不器用さに穴があったら入りたかった。
「そう言われて俺もめちゃくちゃ嬉しい。ただ、あんたが剣士をめざした理由は、あんたを助けた王族の誰かに恩返しをすることだろう?それは確実に俺ではない。あんたは自分の夢から離れたことをしてもいいのか?」
(…この人は本当に…。いつか人に甘えると言う事を知らないと潰れてしまいそうな気がする。そんな人がいつか現れるといいけど…)
しかしこれも王宮でも大勢の人に厄介者として扱われてきた事が大きいかもしれない。その事を考えると、彼を守りたい。そんな感情が前よりもずっと増してくる。
「私は確かに恩返しをしたい。でもそれはちょっと後回しにしてもいいかなって今思ってる。今、私がやりたいことは、リョンヘ様の力になって、いつか必ずリョンヘ様とリョンヤン様が再会できるようにするってこと。」
ハヨンはリョンヘの手を優しく包み込む。彼の手は、夏場とは思えないくらい冷えきっていた。