第5章 新たな仲間
「それは誰だ…?」
いつもより上ずり気味のリョンヘの声がやけに大きく聞こえる。
皆は固唾を呑んで老婆の返答を待った。
「魔物だよ。この燐の初代国王が立たれる前、この世は荒れに荒れた。あの頃の魔物が力を取り戻し始めてるのさ。」
「魔物…」
リョンヘは実感がわかないのか、噛みしめるようにゆっくりとその言葉を口にした。周りにいたハヨン達だって怪訝な表情をした。
「しかし…。リョンヘ様を捉えよとの命を出したのはリョンヤン様ですが…」
セチャンも困惑してリョンヘにそう言った。
「あんた達、魔物の存在を信じていないのかい?あんた達のところに今、四獣の青龍がいるだろう。その者だって人ではない力を持っている。人でないものがいたっておかしくはないだろう?」
「…確かにあなたの言葉にも一理ある。その魔物とやらはリョンヤンのふりをしているのか?だとしたら本物のリョンヤンは…?」
魔物のせいであってリョンヤンがそのような仕打ちをしたので無くとも、また新たな疑問や心配事が増えてゆく。ハヨンはリョンヤンの身が今ごろどうなっているのかと思い、胸が痛かった。
「わしも詳しいことはわからんが、あれは人を操ることができる。ただし、例外もあって王族には術がきかんのだ。だから、あれは王族を操るより、周りを操って、王子を無理矢理服従させているのが合理的と言えよう。」
(なるほど…。それならば王子もいるから、表立ってはちゃんと機能している城の体裁を守れる。外部との9日やり取りもリョンヤン様を使えば公的なものになるし…)
「なるほどな。しかし、あの建国伝記にも四獣のことは出ていたが魔物は一つも出ていなかった。それはどういうことなのだ?」
もし仮に魔物がいても、それはそれで新たな疑問が沸いてくる。これでは動き出すにもなかなか時間がかかるだろう。