第5章 新たな仲間
部屋に通された老婆は見るからにみすぼらしかった。擦りきれた衣服に、長い間櫛を通していない乱れた白い髪。顔には深い皺が刻み込まれ、泥と思われるものが服にも顔にもついていた。
(農家の人かな…)
ハヨンは自分の母も農作業をした後はそのような姿になっていることを思い出した。しかしよくみると老婆の服には細かい刺繍が施されている。これは財力の有るものしか手に入れられないような代物だ。
(なんだかちぐはぐだなぁ…)
ハヨンは彼女の素性がさっぱりわからず首をひねった。彼女は王族の前でありながらも不遜な笑みを浮かべ立っていた。
その様子を見たセチャンが少しじれた様子で老婆に声かける。
「リョンヘ様の御前で無礼をなさるとはそれなりの覚悟があるんでしょうな?」
ここしばらくセチャンと過ごしてきて、彼は生真面目な性格であることが良くわかっていた。形式を何よりも大事にしている。この事に彼が怒りを覚えているのは何となく察せた。
「無礼?」
彼女はさらににやにやと笑う。ハヨンはセチャンが何と反応するかはらはらしてしまった。
(どうしてムニルといいこの人といい、こんなにはらはらさせられるんだろう。こんなんじゃあ心労で倒れるのが先な気がする…。)
城の中は格式張っていたせいか、そのような心配事は一切なかった。逆にここでは王族に囚われずに生きている人が居るということが、ハヨンは少しずつわかってきた。
「私は逆にこちらに礼儀をもって対応して欲しいね。何せ私はそこにいる王子の遠い親戚なんだからさ。」
と彼女はみなの息の止まりそうなことを言って笑って見せるのだった。